「愛知県東浦町の障害者施設虐待死亡事件についての徹底検証と障害者の地域生活実現のための必要な施策の充実を求める声明

東浦町虐待事案声明文

2021年1月28日

愛知県東浦町の障害者施設虐待死亡事件についての徹底検証と障害者の地域生活実現のための必要な施策の充実を求める声明

愛知障害フォーラム(ADF)
代表 加賀時男

 愛知障害フォーラム(ADF)は身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などの障害種別や立場、考え方の違いを超えて、障害当事者や家族の団体、そして支援者などの関係団体が一緒に、愛知県や県下の市町村での障害者施策の推進と、人権保障を推進することを目的に2008年8月30日に設立された障害者団体です。

2020年12月24日、愛知県東浦町の社会福祉法人愛光園が運営するグループホーム「なないろの家」の元職員が、入居している男性(以下Aさん)に対する傷害罪で起訴されました。この事件についての徹底検証と障害者の地域生活実現のための必要な施策の充実を求める声明を発表します。

報道によると、Aさんは2019年7月24日か25日に元職員に腹を蹴られ、小腸に穴が開いて入院し、同年10月に死亡したとのことです。2019年9月には入居者2名が搬送された病院が虐待の通報を行い、入居者の支給決定自治体である二市が調査したにも関わらず、虐待と認定することなく、結果として放置されることとなりました。
また、2018年9月以降、当該グループホームでは死亡したAさんのほか3名が小腸に穴が開くなどの症状で入院しており(1名はすでに他界)、元職員は3名への暴力も認めているようです。既に発生していた2018年からの虐待が疑われる事案に行政が適切に対処していれば、Aさんは亡くならずに済んだかもしれません。障害者虐待防止法では医療機関には虐待通報義務が課されておらず、自治体の虐待にかかる調査は支給決定自治体であるため情報が共有されなかったという仕組み上の課題はあるものの、なぜ虐待を発見し対処することができなかったのか、運営法人が検証委員会を設置すると発表していますが、愛知県、虐待通報を受けた自治体におかれても、早急な検証の場を設置および下記のことを求めます。

1.障害者権利条約が求める障害者の地域生活が実現できる施策を充実させること。
同条約第19条では、特定の生活施設(入所施設)ではなく、「障害者の自立した生活および地域社会への包容」を実現する施策を締約国に求めています。
しかし、2012年に障害者虐待防止法が施行して以来、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待と判断された件数は毎年増加しており、2018年の592件のうち、入所施設(障害者支援施設)での虐待が23パーセントを占め、最も多くなっています。2016年7月には、障害者福祉施設で元職員による19人が死亡、26人が重軽傷を負う相模原殺傷事件が発生しました。 この背景には、多くの障害者が地域生活ができない、入所施設を選択せざるをえない状況であることが大きな問題です。

2.グループホーム制度にも大きな原因がある。
グループホームは「障害のある方が地域住民との交流が確保される地域の中で、家庭的な雰囲気の下、共同生活を営む住まいの場」と厚生労働省が説明している通り、入所施設ではなく住居です。
しかし、2018年4月から開始された新類型の日中サービス支援型グループホームは定員20名までを認めるという大きなものとなりました。制度発足当初のグループホームの理念とはかけ離れたものとなり、近年は営利団体の大規模なグループホーム設立の動きも散見され、その多くが夜間の世話人が1名で運営されており、虐待が表面化しづらい制度となっています。さらに、自治体の障害福祉計画では、障害者の地域生活移行の受け皿としてグループホームが強調され、アパート等の単身生活を可能とする施策は少ないのが現状です。

3.障害者虐待防止法の抜本的な改正を
学校等の教育機関、精神科病院等の医療機関は通報義務の対象外となっています。しかし、こういった場所でも障害者への虐待が多く発生しています。また、障害者虐待の相談、解決の主体は市町村に位置付けられており、小さな自治体では対応できる職員もいません。このような自治体支援も重要です。

以上

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